by John Siau    April 23, 2018
原文

Benchmark製品のリアパネルには、バランス型XLRアナログオーディオ端子があります。便宜上の理由で、多くの製品でアンバランスRCA端子も提供していますが、すべての場合において、バランス接続の方がより優れたパフォーマンスを提供できます。

当社の製品では、アンバランスインターフェースもバランスインターフェースと同じ高い水準で作られていますが、バランス接続の方が高いノイズ性能を持つことは物理法則により明らかです。

この技術資料では、アンバランスインターフェースと比較しながら、バランスインターフェースの優位性について説明してまいります。

ノイズ源

2台のオーディオ製品をケーブルで接続することによりオーディオ信号を汚染する可能性のあるノイズ源がいくつか存在します。グランドループ、無線干渉、磁気干渉、熱雑音、および入力バッファと出力バッファから発生するノイズはその例です。

SN比

SN比(信号対雑音比)は、最大信号電圧とアイドルチャネルノイズ電圧の比率です。この比率は通常dBで表されます。SN比が高いほど、パフォーマンスが向上します。ノイズを完全に聞こえないようにするには、dB単位のA加重SN比が、リスニング位置でのピーク音圧レベル(SPL)(dB SPLで表される)を超える必要があります。この条件が満たされると、ノイズは通常の聴覚の0dBSPLのしきい値を下回ります。

ピーク音圧をSPLメーター(音圧計)で読み取った平均音圧レベルと混同しないようにしてください。ピークレベルは大幅に高くなりますが、アンプの出力電圧とスピーカーの能率から計算できます。この計算は、他の技術資料で説明されていますので、そちらもご参照ください。

ほとんどのオーディオシステムは、何らかの聴き取り可能なノイズを発生します。言い換えると、スピーカーから放出されるノイズレベルは0dB SPLを超えているということです。多くのリスナーは、この邪魔なノイズというものはオーディオ製品の宿命であると受け入れていますが、聴き取り可能なノイズを一切発生しないシステム全体を構築するための技術は存在します。バランス接続は、このような最先端オーディオシステムの重要な機能の1つです。

オーディオインターフェースのSN比

この技術資料では、オーディオ機器を接続してシステムを形成するインターフェース機能に焦点を当てていきます。多くのシステムでは、インターフェースがシステム全体のノイズ性能のボトルネックになります。このボトルネックを回避するには、インターフェースは、シグナルチェーンで最も性能の低い機器よりも優れたパフォーマンスを提供する必要があります。

ノイズ指数

システム全体のSN比に1dB以下の削減を課すようにする場合、信号チェーンで最もパフォーマンスの低い機器よりも少なくとも6dB優れたSN比をインターフェースは持つ必要があります。ノイズ源によってノイズ性能が1dB悪化する場合、これを「ノイズ指数1dB」と呼びます。

システム内でSN比が最も低い機器よりインターフェースのSN比が12dB優れている場合、インターフェースのノイズ指数は0.27dBとなります。12dBは4:1の比率ですが、機器から発生するノイズとインターフェースのノイズの比率が4:1の場合でも、インターフェースによってシステム全体のSN比がわずかに低下します。これは、インターフェースには接続する機器よりもはるかに低いノイズレベルが要求されることを示しています。

例:DACからパワーアンプへの接続

Benchmark DAC3(SN比:128dB A-weighted)をBenchmark AHB2モノブロックアンプ(SN比135dB A-weighted)に直接接続すると、システム全体として約127dBのSN比を達成できるはずです。AHB2のSN比はDAC3のSN比より7dB優れているため、DAC3のノイズ指数は1dBより少し小さい値となるからです。

ノイズがさらに悪化するのを防ぐために、2台の機器間のインターフェースには、システム全体のSN比127dBよりも少なくとも6dB優れたSN比が求められます。これは、インターフェースのSN比が少なくとも133dBである必要があることを意味します。しかし、DAC3の2V(8.2dBu)のRCA出力を使用しても、望ましい結果を得ることはできません。計算上8.2 dBuで-133 dBを得るには、アンバランス出力~アンバランス入力の系全体で-124.8dBuのノイズレベルを達成する必要があります。

しかし、この数値は600Ωの抵抗器で発生する熱雑音に相当する値で、ほぼ達成不可能なものです。アンバランス入力段とアンバランス出力段は非常に低いインピーダンスを使用する必要があり、さらにグランドループによって発生する妨害で受けるノイズを拾わないことが前提になりますが、現実には無理です。

上述の例では、上流側のDAC3のアンバランス出力がノイズ性能のボトルネックになります。DAC3は高品質で低ノイズのアンバランス出力を装備していますが、DAC3のSN比のフルスペック128dBには達していません。理想的なラボ環境下ですら、DAC3のアンバランス出力を使用してDAC3をAHB2に接続すると、システム全体のSN比が約10dB低下します。ラボ環境以外の一般的な使用環境では、アンバランスインターフェースにはグランドループと電磁干渉(EMI)によりさらにノイズが追加される可能性があります。

しかし、DAC3でバランス出力を使用すれば、このインターフェースに求められるタスクの達成は容易です。より高い電磁干渉耐性により、目標となるシステム全体のSN比を達成することができます。

なぜAHB2パワーアンプにはアンバランス入力がないのか?

AHB2のリアパネルを見ると、アンバランス入力がありません。アンバランス入力は、SN比135dBを実現している機器には何の役にも立ちません。アンバランスインターフェースは、約8.2dBuである2Vrmsで動作します。計算すると、8.2dBu-135dB-6dBとなり、ノイズ指数1dBを達成するには、インターフェースのノイズを-132.8dBuにする必要があることがわかります。

この数値のレベルを他のもので例えると、91Ωの抵抗器は-132.8dBuの熱雑音レベルを発生し、最高級クラスのマイク・プリアンプは約-130dBの等価入力ノイズ(EIN)を持っています。つまり、2Vrmsの入力レベルを使用する限り、今までに存在するどのマイク・プリアンプよりも優れた入力アンプが必要だということです。しかし、現実には物理法則により、この要件を達成することは不可能です。

唯一の解決策はより高い信号レベルを使用することですが、バランス出力でしか使用することができません。

民生用機器との互換性のために、AHB2には3つの入力ゲイン設定があります。高ゲインモードは2Vrms入力、中ゲインモードは4Vrms入力、低ゲインモードは業務用で使用される+24dBu(12.28Vrms)入力に対応しています。最高のパフォーマンスを発揮するには、低ゲインモードを使用し、プロフェッショナル・スタジオレベルの入力をAHB2に供給することが不可欠です。

信号レベルを上げる

インターフェースのSNRを改善する最も簡単な方法の1つは、信号レベルを上げることです。例えば、信号電圧を2倍にすると、レベルは6dB増加し、これによりインターフェースのSN比は6dB増加します。

スタジオグレード・バランスインターフェース

プロフェッショナル用途のバランスインターフェースは、一般に、民生用のアンバランスインターフェースよりもはるかに高い信号レベルで動作するものです。この電圧差により、このプロ用バランスインターフェースは、アンバランスインターフェースよりもSN比が大幅に向上します。

ほとんどのRCAアンバランスインターフェースは、2Vrmsである+ 8.2dBuの最大信号レベルで動作します。対照的に、プロ用バランスインターフェースは通常、12.28Vrmsである+ 24dBuの最大信号レベルで動作します。計算すると24dBu-8.2dBuとなり、プロ仕様バランスインターフェースでは信号レベルが15.8dB高いことがわかります。ノイズレベルが両方のインターフェースで同じ場合、プロ用バランスインターフェースを使用することにより、インターフェースのSN比が約16dB改善します。

ただし、バランスインターフェースには、常に出力バッファ2個と入力レシーバーが2個必要になります。これらのアクティブデバイスの追加はノイズの原因となり、SN比の改善が約3dB低下する傾向があります。これを考慮すると、プロ用バランスインターフェースのインターフェースSN比は、民生用アンバランスインターフェースのSN比よりも約13dB優れています。

さらに、バランスインターフェースは、多くの干渉を排除することができます。この干渉に対する耐性により、不要なノイズを50〜100dB削減することができ、干渉を聞こえなくするのに十分すぎるほどです。

プロ仕様インターフェースの構築には、より高いコストが必要です。信号レベルが高い場合は、通常、オーディオ機器内には +/- 18Vの電源を使用する必要があります。しかし、民生用オーディオ機器では、コストを節約し、消費電力を削減するために、はるかに低い電源電圧を使用しているが一般的です。その結果、プロ仕様の信号レベルに対応するバランスインターフェースを備えた民生用オーディオ機器はめったにありません。これらの製品では、はるかに低い電圧で動作する、「低レベルの」バランスインターフェースとなっています。

民生用グレード・バランスインターフェース

多くのハイエンド民生用オーディオ機器はバランスインターフェースを備えていますが、最大レベルは4Vrms、つまり+ 14.2dBuで動作するものとなっています。これは、プロ仕様バランスインターフェースで使用されるレベルよりも10dB低くなっています。これは、+ 24dBuバランスインターフェースによって提供される13dBの利点が、民生仕様の+ 14.2dBuの最大レベルで動作している時には、たったの3dBに減少することを意味します。民生用バランスインターフェースは、アンバランスインターフェースよりも確かに一歩優れていますが、非常に高性能なシステムで使用するには信号レベルが低過ぎます。

Benchmark製D/Aコンバーターは、プロフェッショナルグレードの+ 24dBuバランス出力を装備しています。このバランス出力には、民生用グレードの4Vバランス入力を持つ機器を駆動するために10dBのパッシブ型パッド(固定アッテネーター)があります。このパッドが必要な場合、システム下流側機器がシステム全体のSN比パフォーマンスのボトルネックになっていることを示しています。同様に、AHB2には、4Vrmsの民生用バランス出力機器からの入力に対応するゲイン設定があります。繰り返しますが、これらの民生用機器はシステムの弱点になるのです。

仕様表を確認し、プロ用信号レベルに対応したバランスインターフェースか確認してください。民生用グレードのバランスインターフェースは、プロ用インターフェースのように見えるかもしれませんが、プロ用と同じレベルのパフォーマンスを提供できません。

コモンモードノイズの除去

バランスインターフェースの最大の利点は、コモンモードノイズ信号を除去できることです。バランス入力レシーバーには、+入力ピンと-入力ピンの信号レベル差に応答するアクティブ型差動アンプまたはパッシブ型トランスがあります。XLRコネクタのアースピンはシールドにのみ接続されます。アース接続はオーディオ信号の一部ではなく、入力差動アンプまたは入力トランスでは無視されます。

グランド電流とグランド電圧の差により、+ピンと-ピンの両方で同一のノイズ信号が発生する可能性がありますが、このコモンモードノイズはキャンセルされ、入力トランスまたは適切にトリミングされた差動アンプによって除去されます。

CMRR(同相信号除去比)

同相信号除去比(CMRR)は、バランスレシーバーがコモンモード(同相)ノイズをどれだけうまく除去できるかという尺度です。高いCMRRは、バランスレシーバーが、グランドループやその他の同相干渉源によって引き起こされるノイズ電圧のほとんどを除去できることを意味します。パッシブ型トランスは一般的に非常に高いCMRRを提供しますが、歪みと周波数特性上の問題が起きる可能性があります。アクティブ型差動アンプは、トランスよりも優れた透明度(信号に対して色付けが発生しないこと)を提供でき、適切にトリミングされれば非常に高いCMRRを実現できます。

優れた差動アンプなら、ACライン周波数で少なくとも50dBの除去が可能です。これは通常、ACのグランドループ干渉を聞こえないレベルに減らすのに十分な値です。Benchmark製品で使用されているような適切にトリミングされた差動アンプでは、ACライン周波数で70〜100dBのCMRRを実現できる可能性があります。

差動アンプ=バランス入力レシーバーのキーパーツ

CMRRが0dBのバランス入力を持つ民生用オーディオ機器がいくつかあります。このようなものは「フェイクの」バランス入力と呼ぶべきです。入力端子こそXLRコネクタを装備していますが、-(マイナス) ピン(3番ピン)を無視する仕様だからです。このようなバランス入力は、XLRコネクタに配線されたアンバランス入力に過ぎず、これらRCAアンバランス入力に勝る利点は全くありません。ほとんどの場合、XLR端子の2番ピンは、近くのRCA入力のホット接点に直接接続されています。こうした仕様の場合、XLR端子は単なるアダプターに過ぎません。

また、XLR端子の+(プラス)ピンと-(マイナス)ピンを使用する機器でも、信号がバランス出力を通過するまでにコモンモードノイズを除去できないものがあります。このような機器は、下流側の機器がコモンモードノイズを除去することを期待して、コモンモードノイズを渡しているだけです。仕様表にCMRRの項目が見つからない場合、バランス入力に差動アンプがない可能性があります。このような場合も、XLR端子を使用してはいても、そのバランス入力はアンバラン出力に信号を送るだけのアンバランス入力に過ぎません。

D/Aコンバーターの差動アンプ

高音質D/Aコンバーターチップはバランス出力を使用しています。このバランス出力の目的は、コンバーターチップで発生するコモンモード歪みを除去しながら、信号レベルを2倍(6dB)増加させることです。このコモンモードエラーは、音楽的に心地よいものではない奇数次高調波歪みになる傾向があります。この低レベルの歪みは、楽音の特徴を変え、音楽そのものを損なう可能性があります。このコモンモード歪みは、D/Aコンバーターチップから適切にトリミングされた差動アンプに信号が送られる場合にのみ除去することができます。

差動アンプを完全に省略したD/Aコンバーターを今までたくさん見てきました。差動アンプの省略は、実はほとんどの「ハイエンド」D/Aコンバーターでよく用いられている手法なのですが、残念ながら、これは非常に予測困難なパフォーマンスの原因になります。このようなD/Aコンバーターは、オーディオアナライザーのバランス入力に接続されている場合は良い測定結果が得られますが、実際に使用するシステムでは同じようにうまく機能しない場合があります。

なぜなら、優れたオーディオアナライザーは常に優れたCMRRを持っており、これによりD/Aコンバーターチップで発生するコモンモード歪みを除去することができます。しかし、実際のシステムでは、D/AコンバーターがCMRRの低いバランス入力を駆動している可能性があり、コモンモード歪みは除去されません。

さらに、このD/Aコンバーターにアンバランス出力もある場合、アンバランス出力は、バランス出力では差動アンプによって除去されたはずの歪みで汚染されています。この歪みがアンバランス出力に達してしまうと、下流側の機器で除去できなくなります。

こうした問題を回避するために、Benchmark製D/Aコンバーターには、適切にトリミングされた差動アンプが実装されており、コンバーターのコモンモード歪みは出力に到達する前に除去されます。歪みの面では、Benchmark製D/Aコンバーターのバランス出力とアンバランス出力は同じTHD性能を持ちますが、ノイズの面ではバランス出力の方が優れたパフォーマンスを持っています。

グランドループ問題を解決する

バランス接続で構築されたシステムでは、グランドループがコモンモードノイズを発生しても、バランスレシーバーはこの厄介なノイズをほぼ完全に(50dB~100dB)除去することができます。このため、バランスインターフェースは、プロフェッショナル環境では絶対に必要不可欠と考えられています。

バランスインターフェースは、複雑な家庭用Hi-Fiシステムで発生する多くのグランドループの問題の解決策でもあります。ケーブルTVセットトップボックス、TVアンテナ、コンピューターのUSBポート、およびACのアースピンはすべて異なるアース電位になっている可能性があります。ケーブルTVとアンテナケーブルは、建物に入る場所でコードでアースを取る必要があります。

これらの接地点で、ACコンセントのアースピンと同じアース電位になることはめったにありません。USBシールドは、比較的ノイズの多いコンピューターのマザーボードに接地されている可能性があり、それが更に別のグランドループを引き起こす可能性もあります。

USBケーブルを電気的に絶縁することは、グランドループの問題に対して絆創膏を貼るような類の対策です。この対策により、オーディオ干渉が部分的に減少する可能性はありますが、USBケーブルで発生するRF放射は増加する可能性があります。理想的には、USBシールドはケーブルの両端でシャーシのアースに接続する必要があります。こうすれば、バランスアナログオーディオ接続を使用することで、グランドループ干渉を簡単に取り除くことができます。

オーディオ機器が相互に接続されている場合、さまざまなグランド電位間をAC電流が流れます。ほとんどの場合、このような電流はオーディオケーブルの外層のシールドを通って流れます。

アンバランスケーブルは、シールドを使用して2つのオーディオ導体の1つを形成します。このようにシールドを二重(2つの用途)に使用しているため、アンバランスインターフェースはケーブルの両端間のアース電位差に非常に敏感になります。

対照的に、バランスケーブルはシールド専用としてシールド編み線を使用しています。この外部シールドは、オーディオ信号の導体の片方ではありません。シールドのノイズはオーディオ回路から十分に分離されています。

RF干渉の除去

バランスケーブルとアンバランスケーブルの銅編み線または箔シールドは、無線周波数(RF)干渉から保護することを目的としています。この「ファラデーシールド」によって、芯線を無線干渉から隔離しています。

しかし、アンバランスケーブルでは、このシールドはオーディオ信号線(GND)を運ぶためにも使用されます。このようにシールドが2つの役割を担う場合、RFエネルギーの一部がオーディオを汚染する可能性があります。このシールドの二重使用により、アンバランスインターフェースがRF干渉に対して敏感になる可能性があります。そのため、近くのラジオ局や携帯電話から聴き取ることのできる妨害が発生する可能性があります。それ以外の場合でも、RF干渉により、オーディオシステムで発生する歪みが増加します。

バランスケーブルでは、シールド編み線は専用の目的、すなわち純粋なシールドとして使用され、オーディオ信号の伝送には使用されません。そのため、バランスケーブルの方がRF干渉に対するシールド能力がわずかに向上しています。ほとんどの場合、このシールドは、無線信号による聴き取ることのできる暴対を防ぐのには十分です。

磁気干渉の除去

ケーブルの外側にある編線やフォイルによるシールドは、磁界に対するシールド能力がありません。これは、磁石と銅コインで実証できます。磁力は、ほとんど変化することなく銅のコインを通過します。同様に、磁界は減衰することなく銅や箔のシールドの複数の層を通過することができます。

オーディオ機器、コンピューター、および充電器の電源は、オーディオケーブルに干渉を引き起こす可能性のある交流磁界を発生します。オーディオケーブルが交流磁界の近くを通過すると、ケーブル内の導体は変圧器の2次巻線のように機能し、磁気誘導された電圧を拾います。この磁気誘導電圧は、ACラインハム、ACライン由来のバズ、またはその他さまざまな望ましくない醜い音として聞こえる可能性があります。

バランスインターフェースでは、+導体と-導体の両方がまったく同じコモンモード(同相)干渉を受けている場合にのみ磁気干渉を除去することができます。片方の導体が他方よりも多くの磁気干渉を受ける場合、除去できる量は大幅に減少します。実際には、1本の内部ワイヤが磁気干渉に近くなり、より強い磁場が発生します。この不均衡が除去量を減らしてしまいます。

4芯スタークワッドケーブルを使用すると、一般的な2芯バランスケーブルと比較して、磁気干渉の除去量を約20〜50dB改善できます。スタークワッドケーブルは、+信号用に2つの導体を使用し、-信号用に2つの導体を使用します。これらの導体の正確な幾何学的構成により、+導体と-導体の両方のペアで磁気干渉のコモンモードピックアップ量が等しくなります。バランスレシーバーのCMRRが良好なら、この磁気誘導による同相モード電圧は除去することができます。

実際には、短いラインレベルのバランスインターフェースにスタークワッドケーブルが必要になることはめったにありませんが、ほとんどの場合、マイク入力で役立ちます。それでも、ラインレベルのバランスインターフェースでスタークワットケーブルを使用さすれば、磁気干渉に対してマージンを余分に確保することができます。このため、当社Benchmarkは、すべてのバランスインターコネクト接続にスタークワッドケーブルを使用することを推奨しています。スタークワッドケーブルは、予期しない磁気干渉源に対する優れた保険となります。

熱雑音(ジョンソンノイズ)

すべての電気部品は、一定量の熱雑音(ジョンソン雑音として知られています)を発生します。これには、抵抗などの受動部品が含まれます。はい、受動部品でもノイズを発生させるのです!このノイズは、熱によって引き起こされる電子のランダムな動きによって引き起こされます。

たとえば、10kΩの抵抗器は、室温でオーディオ帯域全体で-112dBuのノイズレベルを発生します。この10kΩ抵抗を介して130dBのSN比を達成するには、信号レベルは、-112dBuよりも18dBu高い130dBである必要があります。民生用レベルの2Vrms(8.24 dBu)のアンバランス信号を使用している場合、信号が10kΩ抵抗を通過した後でも130dBのSN比を達成するには約10dB足りません。より高いSN比を達成したい場合、次の2つの選択肢があります。1つは抵抗値を小さくすること、もう一つが信号レベルを上げることです。

しかし、実際のオーディオ回路には多くの抵抗器が含まれています。各抵抗器によるノイズへの悪影響は累積的積みあがります。このため、駆動インピーダンスを低く保ち、信号レベルを高く保つ必要があります。民生用アンバランスインターフェースの2Vrmsというレベルは全然不十分なのです。アンバランスインターフェースを使用すると、非常によく設計された製品でも約100dB~110dBのSN比が限界です。アンバランスインターフェースを使用する民生用製品は多くの場合、わずか80〜100dBのSN比しか提供できません。

アンバランスヘッドホンに関するオーディオの迷信

これについての議論は、「アンバランスヘッドホン・トランスデューサーというものはそもそも存在しない」(Stax製などDCバイアス型静電ヘッドホンを除いて)ということを言及せずに完了することはできません。

ヘッドホン・トランスデューサーは、そもそも給電する2本の線材間の電圧差に応答するものです。アースや他の導体への経路がないため、コモンモード干渉を完全に排除します。言い換えると、グランドループのパスはないのです。

ヘッドホン・トランスデューサーは、給電する2本の線材以外のすべてのものから電気的に絶縁されています。両方の導体が差動で駆動されるか、1つの導体のみが駆動されるかは関係ありません。ヘッドホン・トランスデューサーは、コモンモードノイズを排除します。

左右のトランスデューサーに給電するために別々の線材を使用することにはいくつかの利点があり、TRSヘッドフォンジャックの代わりにXLRコネクターを使用することにはいくつかの利点があります。しかし、これらはいずれも「バランス駆動対アンバランス駆動」の議論との関係ありません。

バランス駆動は、特定の電源電圧に対して2倍の電圧を提供できます。XLR端子は、多くの場合、TRS端子よりも優れた電気接続を提供します。また、左右のチャンネル用に別々のリターンピンを使用するとクロストークを減らすことができますが、チャンネルの分離はヘッドホンでのリスニングではチャンネルセパレーションは実際には問題になりません。

この技術資料では、ヘッドホン・トランスデューサーは完璧なバランス入力のように常に動作することを理解することが重要です。どのように駆動されているかは問題ではありません。ヘッドホン・トランスデューサーは、線材しかないため、コモンモードノイズを完全に除去することができます。なぜなら、電子が流れる他の経路がないため、2本の線材を流れる電流の大きさは等しく、プラスとマイナスの反対の極性になるからです。

AESバランス・デジタルインターフェースというオーディオの迷信

デジタルオーディオの黎明期、Audio Engineering Society(AES)は、既存のアナログXLRケーブルを使用してデジタルオーディオを伝送するのが便利と判断しました。しかし、私は、これは拙いアイデアだったと思っています!

バランス接続は、デジタルオーディオ信号伝送では利点がありません。デジタル信号は、ノイズに対する実質的な耐性を持っています。デジタルオーディオ伝送に使用されるデータ形式は、オーディオ帯域内にスペクトル成分が存在しないように設計されています。この機能により、単純なハイパスフィルターを使用すればACライン周波数による干渉を除去できます。

一方、デジタルパルスは、RF周波数に相当量のエネルギーを発生します。ケーブルのインピーダンスが指定され、ケーブルのインピーダンスと一致する抵抗性負荷で終端されている場合にのみ、このパルス形状を維持することができます。既存のアナログXLRケーブルにはさまざまなインピーダンスがあり、インピーダンスは十分にコントロールされていませんでした。

アナログケーブルはデジタル信号伝送においては完全に信頼できないことが判明し、特別なデジタルXLRケーブルを作成する必要がありました。現在、ほぼ同じように見えるアナログおよびデジタルオーディオケーブルが混在しています。しかし、アナログオーディオ接続にはデジタルケーブルを使用できますが、デジタルオーディオ接続にはアナログケーブルを使用できません。

AESは当初、XLR端子と特別な110Ωケーブルを使用するデジタルオーディオの標準仕様(AES3規格)を定めました。しかし、同軸ケーブルは、長い伝送距離にわたってより良い信号品位を実現できることが報告されています。同軸ケーブルは1000mケーブル伝送に対応しますが、110Ωのケーブルは伝送距離が約100mに制限されています。ビデオ業界は、75Ω同軸ケーブルでデジタルオーディオを伝送する別の標準を作成しました。その結果、AES3規格は更新され、同軸ケーブルによるデジタルオーディオ伝送が含まれるようになりました。

選択肢があれば、長いケーブル配線(約50m以上)を行う場合は、XLRバランスデジタル接続の代わりにアンバランス同軸デジタル接続を使用することを強くお勧めします。一部のプロ用製品では、RCA端子の代わりにBNC同軸端子を使用しています。民生用およびプロ用デジタルオーディオフォーマットは、互いに通信できるように設計されていますので、単純なアダプターを使用して、RCA端子およびBNC端子を接続することができます。ただし、バランス型とアンバランス型のデジタルオーディオ端子をアダプターを介して使用する場合は、トランスが必要になります。

オーディオインターフェースの典型的な性能

ラボでオーディオ製品をテストした時に測定したものに基づいて、オーディオインターフェースの典型的なパフォーマンスの数値をまとめました。これらはおおよその数値であり、注意深い技術手法で改善することが可能です。それでも、これらがかなり典型的な数値であると私は信じています。

  • 2Vrmsアンバランスインターフェース:100dB(17ビットデジタルシステムと同等のSN比)を超えるSN比を提供できることはめったにありません。
  • 4Vrms民生用グレード・バランスインターフェース:最大約125dBのSN比(21ビットデジタルシステムと同等のSN比)を提供できます。
  • 24dBuプロフェッショナルグレード・バランスインターフェース:最大約135dBのSN比(23ビットデジタルシステムのSN比に相当)を提供します。

原則として、プロフェッショナルグレード・バランスインターフェースは、今日の最高のD/Aコンバーターとアンプのパフォーマンスに匹敵する性能を提供できる唯一のインターフェースです。対照的に、アンバランスインターフェースは、システムをCDクオリティの性能に制限する傾向があります。

まとめ

  • プロフェッショナルグレードのバランスアナログオーディオインターフェースは、+24dBuの高い信号レベルにより、アンバランスインターフェースよりもSN比で12〜16 dBの優位性を持っています。民生用バランスインターフェースは、信号レベルが+ 14dBu(4Vrms)と比較的低いため、SN比で3〜6dBの優位性しかありません。
  • さらに、バランス入力の差動アンプまたはトランスにより、驚くべきことにグランドループ干渉を50〜100dB除去することができます。これは、グランドループ干渉を完全に聞こえないレベルにするのに十分な値です。
  • アンバランスインターフェースでは、シールドと信号線(GND側)を共有して使用するため、オーディオパスにグランドループ電流が流れます。アンバランスインターフェースは、オーディオ機器間を流れるグランド電流に非常に敏感です。バランスインターフェースではシールドとは別の専用の導体を使用しているため、この問題はありません。
  • 銅編線または箔のシールド層により、RF干渉に対するシールドが施されています。バランスケーブルでは、シールドはオーディオ信号を伝送しません。オーディオ信号用導体はシールド層に完全に囲まれていますが、シールド層から電気的に絶縁されています。一方、アンバランスシステムでは、RFシールドはオーディオ信号のGND側としても機能します。アンバランスシステムでRFシールドがこのように二つの用途で共用されていることで、RF干渉に対しわずかながら影響を受けやすくなっています。
  • 銅編線および箔のシールド層は、磁気干渉に対するシールド性能を持っていません。磁界は銅編線や箔を簡単に通過してしまいます。スタークワッドケーブルをバランスシステムで使用すれば、磁気干渉はバランス入力レシーバーのCMRRによって除去できます。バランスシステムで4芯スタークワッドケーブルを使用すれば、標準の2芯平衡型ケーブルと比較して磁気干渉を20〜50dB低減することができます。
  • これらの数字は無視するのは難しいはずですが、Hi-Fi業界は変化の遅い業界です。ハイエンドオーディオ製品には、バランスインターフェースを備えていないものがまだ数多くあります。それ以外でも、民生用グレード4Vrmsバランスインターフェースしか装備していない製品がありますが、これは正しい方向ではありますが、部分的な進歩に過ぎません。
  • これらの事実は、アンバランスインターフェースを使用して最先端のオーディオパフォーマンスを達成することは事実上不可能であることを示しています。これは、理想的な十分にコントロールされた条件の下、ラボでバランスインターフェースおよびアンバランスインターフェースを測定するときに確認することができます。ラボの外、すなわち現実の世界では、バランスインターフェースの優位性は、製品データシート上に示されているバランスとアンバランスの仕様諸元よりも大きくなります。一般的なオーディオシステムでグランドループ、RF干渉、および磁気干渉が発生した場合、その差は非常に大きくなる可能性があります。
  • 当社の推奨事項は何か?可能な限り、アンバランス(RCA)アナログインターフェースを避けてください!オーディオ製品を購入するときは、プロフェッショナルグレードのバランスインターフェースを装備しているか確認してください。仕様表のバランス入力の項目にCMRRの表記があるか確認してください。バランスインターコネクト接続に対応していないオーディオ機器は交換を検討してください。このようなアンバランスインターフェースしか装備しない機器は、おそらくオーディオシステム上の弱点になっているはずです。